2021年度から福祉分野において求められる災害対策
~ますます必要とされる防災分野における福祉的視点~
災害救助法の中に「福祉」が位置づけられるようになったのが2020年のこと。
福祉といってもその指すものは非常に幅広いものです。
いま被災地支援において、福祉の観点からの支援、専門職による支援が不可欠であることに異論を挟む人はいなくなりました。
そのような中で、国では
「災害福祉支援ネットワーク構築推進事業」
「災害ボランティアセンター設置運営研修支援事業」
を予算化しました。
また介護・障害福祉分野において、報酬改定にあわせて、災害時の事業継続計画(BCP)策定をはじめとする
「災害への対応力の強化」
がうたわれ、自治体関係者は、
「個別避難計画の策定」
の努力義務化への対応を求められています。
関係者はそのための取り組みを加速化していくフェーズへと入っていくスタート、「福祉防災元年」とも言える年が、この2021年なのです。
2021年(令和3年)の介護報酬改定、障害福祉サービス等報酬改定において、災害対応に関することが内容に盛り込まれました
(共に2020年12月に方針が示されました)。
【社会福祉協議会等】
「市区町村災害VC運営者研修」
「市区町村災害VCマネジメント研修」
広域な大規模災害、COVID19と共存する社会における災害ボランティア活動支援のあり方…。
この時代において災害ボランティア活動を支えることができる災害ボランティアセンター運営のために、市区町村段階での研修が本格的に始まります。
多数の自治体に同時に被害が及ぶ広域災害、コロナ禍における災害では、これまでのような大規模な外部からの応援が思うように機能できないことが想定されます。
そのような中では、いかに地元において支援者人材を確保できるかにかかってきます。
そのために、地域の方を中心に災害ボランティアセンター運営ができるようにするために、市区町村段階での「災害ボランティアセンター運営者研修」を実施して、地元での支援体制の構築を図ります。
加えて、非常事態下での災害ボランティアセンターの運営には経験者を初めとする先を見通せるマネジメントができる人材が不可欠です。そのための「災害ボランティアセンターマネジメント研修」。
これらが円滑に実施されるよう、「災害ボランティアセンター設置運営研修等支援事業」として、厚生労働省により予算化されています。
「災害ボランティアセンター設置運営研修等支援事業」
◆実施主体:都道府県・市町村
◆国の補助率1/2
①都道府県社協による市町村社協への研修・指導経費への補助事業
②市町村社協による実地訓練等に必要な経費への補助事業
【介護サービス】
「感染症や災害への対応力強化」
介護事業者(通所系、短期入所系、特定施設、施設系、小規模多機能型居宅介護)、2021年度からは災害対応に関わる省令改正が行われました。
施設が地域との連携を念頭に、災害対応の訓練実施にあたって地域住民の参加が得られるように連携に努めなければならないと義務化されました。
○感染症対策の強化
※3年間の経過措置期間あり
○業務継続に向けた取り組みの強化(BCP策定)
※3年間の経過措置期間あり
○災害への地域と連携した対応の強化
厚労省からは新型コロナウィルス感染症関係、自然災害関係それぞれの「業務継続ガイドライン」が令和2年12月に発出されており、それらを踏まえつつ、現実の災害時に機能する業務継続の計画や計画の日常的な運用について考え取り組んでいく必要があります。
その地域、その施設の特色を踏まえたものを、共に考え、作っていけたらと考えています。
【障害福祉サービス】
「感染症や災害への対応力強化」
感染症や災害が発生した場合でも、利用者に必要なサービスが継続的に提供されるよう、日頃からの備えや業務継続の取り組みを推進する観点から運営基準の見直しが行われました。
○感染症の発生およびまん延等に関する取り組みの義務化
※一定の経過措置あり
○業務継続に向けた計画等の策定や研修・訓練等の実施の義務化
※一定の経過措置あり
○地域と連携した災害対策の推進
施設系サービス:委員会の開催や指針の整備、研修の定期的実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施
訪問系・通所系・居宅サービス等:委員会の開催や指針の整備、研修や訓練(シミュレーション)の実施
ということがうたわれました。
これらへの対応をその組織にあったかたちで、そして現実の災害時に役に立つ取り組み方法はどのようなものか、共に考え、作って行けたらと考えています。
【ネットワークづくり】
「平時の関係づくり」
被害市日本大震災を契機に、その後も毎年のように各地で災害が発生する状況から、災害を想定した体制づくりが進められています。
災害時には多様な関係者がその力をあわせて、緊急救援、そして復旧・復興に取り組んで、生活を取り戻していくとになります。
とかく、自分たちの日常の業界だけで話を進めてしまいがちですが、いったん災害が起こると、あらゆる地域の関係者が被災者となり、また支援者となって協力していかなければならない状況におかれます。
災害が発生してから「初めまして」とならないよう、普段からどれだけ多様な関係者との顔の見える関係を構築するかが求められています。
「現実に機能するネットワークとするために」
協定締結、連絡会議等協議体の結成、マニュアル策定を平時に取り組むのは良いことですが、その構成員が「対等」に「主体性をもって」動く協働体制となっているかどうかが、実際の災害時にきちんと機能するネットワークであるかどうかに直結します。(事務局 VS 構成員になっていないか)。
それぞれの役割を平時に議論し、コンセンサスを得る作業が大切です。
「情報共有会議」
2015年関東・東北豪雨以来、災害が発生した際、支援者による「情報共有会議」が都道府県域において開催されることが増えてきています。
これは広域災害の場合、市区町村域においても必要な機能であり、「災害ボランティアセンター」の機能とは別に、被災者からの多様な支援ニーズに対応するために重要な役割を果たしています。
それらが災害時に運営できるように、事前の準備を行うことが重要となってきています。
【自治体(行政)】
「個別避難計画策定」
災害時に手助けが必要な高齢者や障害者といった「要支援者」一人一人に対する避難計画を作成することを市町村の努力義務とする改正災害対策基本法が2021年3月28日に成立しました。
日ごろから介護が必要な高齢者と接している福祉専門職の協力なくして、この計画策定は進みません。
また、これまで災害時に何度もその情報共有の壁として問題視されてきた「個人情報保護法」のと関係もきちんと整理をして、多様な関係者間でのICTを駆使した必要事項の情報共有を躊躇しては、連携することはできなくなってしまいます。
福祉関係者側からの視点としては、平時の地域での見守り活動や介護サービス、障害福祉サービス、民生委員・児童委員活動などと、これから策定される個別避難計画が連動して初めて機能するものと考えます。
また、福祉関係事業者がこの4月以降に義務づけられた事業継続計画(BCP)の策定と運用、福祉施設を災害時の福祉避難所として協定を締結して準備を進めることについても、個別避難計画と別個に検討してしまっては、それぞれの連携がはかれず、災害時に実効性あるものとすることが困難になってしまいます。
まずは、地域のそのような各関係者間で行われている検討や計画策定について、スタート時から連携をしながら進めることが重要です。